第107号 障害者のお出かけ
『捨てる神あれば拾う神あり』という言葉をご存じの方は多いと思います。私は何度も、神様に拾われた経験をしました。皆さんも神様に捨てられたり、拾われたりと種々様々な経験をお持ちのことでしょう。今回はそんな私の経験を紹介します。
始めの詩は、近くのお好み屋さんへ出かけた時の話を書いてみました。埒も無い詩ですが、読んでみてください。
ほんのちょっぴりでも、見えない私たちのことを知っていただけたなら幸いです。
〈お出かけ〉
三人で出かけました
午後五時に待ち合わせです
縦一列に並び歩きます
思い思いに白杖を振りながら
ぴったりと息を合わせて歩く
三人とも中途で目を失くした者同士です
僕は40代後半
二人は二十代前半で失明したのです
ひとりは工場の爆発事故で
もう一人は急な病気で
そんな奇妙なグループです
鬱蒼としたリハの森は
まだ芽吹くこともなく
静かに音なしの構えです
目指すお好み焼き屋さんは
すぐそこです
夕食には早い時間なので
お客さんの姿はまばらです
おかみさんが席まで案内してくれると
白杖をたたみ
ジャンバーを脱いで
メニューを読み上げてもらいます
まずはドリンク
次にサラダ
そしてお好み焼きを
思い思いに注文しました
見える人たちは
それぞれ自分で焼いています
我々は店のオーナーに焼いてもらいます
それは絶妙の焼き方です
ふうふう
はふはふと
三人は夢中に食べ
一息つくと 会話が弾みます
勉強のことや障害を持った経緯
生まれ故郷の自慢と
尽きることはありません
音声時計のスイッチを押すと
20時18分ですと言った
そこで帰ることにして
割り勘で清算し
親切で美味しいお店とはお別れです
帰り道も縦一列に並び
コツコツと白杖を振り振り歩きます
僕が一番後で
やっとのことで付いて行きます
前の二人はテンポよく
歩く速度も早足で
何時しか気配もなくなりました
一人歩きが苦手な僕は
点字ブロックを見つけることもできずに
左側の家々の
塀を白杖で探りながら
ゆっくり前進しています
突然歩道が低くなり
家の塀も無くなりました
僕の頭の中で描いている
地図をフルに活動させて
まだ直進すればよいはずだと
自分を信じて歩きます
しばらくすると
自動車の走行音が聞こえてきました
よしここを左折すれば
間もなく歩道橋があるぞと
ほっと安心してしまいました
しかしすぐに行きどまり
歩道橋は確かにこの道にあるはず
きっと上り口を過ぎてしまったのだと
引き返しました
そして もう一度挑戦です
それでもまだ歩道橋に上れません
一瞬だれかが横ぎった気配がし
「すみません」と声をかけてみましたが
何の返事もありません
気のせいだったのかと行ったり来たり
困り果てていると 後ろから
「なにかお困りですか」と
優しい天使の声が聞こえたのです
僕はこれ幸いと
「歩道橋を探しているのですが」と
力なく言いました
すると「ここは歩道橋の下です」と言い
「私は国リハで学んでいる者ですがどちらまで行くのですか」と
地獄に天使の偶然です
僕は優しく明るい女性に手を引かれ
元気を取り戻し
国リハまでのわずかな道のりの
ロマン歩行を楽しみました
※ コクリハ:国立障害者支援センター。ここでは、様々な障害を持った人たちが学ぶとともに、大学を卒業した健常者が、福祉関係を専門学校で学んでいます。
▽ 文字通り、天使に拾われた経験でした。
このお好み焼き屋さんは、私たち障害者の為に内装まで改装してくれたと聞いています。
次の詩は、なぜか忘れてしまいましたが、どうにもこうにも腹立たしさが治まらずに書いた詩です。
どうぞ読んでください。
怒怒怒
春一番が
怒涛の如く襲い来て
破天荒な川までも
力づくで飼い慣らし
凍った空を
すっかり溶かして流れ行き
春雷は吠えて
山々に轟
空さえ割れて
太陽は落ちて
坂東太郎は荒れ狂い
腹の奥底まで
怒怒怒怒怒
何の意味もない詩でしたが、この後、神様(国リハの友)になだめてもらったのでした。
そして、この時の私のとりとめもない怒りを感じていただけたなら幸いです。
今回も、読んでくださりありがとうございました。
石田眞人でした