第九十九号 人生の決断
今まで生きてきて、皆さんも何度か人生の節目があったと想いますが、すぐに思い出せる出来事、あるいはそんな経験はありますか。
私自身の例で恐縮ですが、『家を出て東京で働こうと決断した時』『結婚を決めた時』『養子に入ってくれと言われ、迷いに迷い了承した時』と、何度かありました。
井上陽水の昔の歌に♪人生が二度あれば♪と言う歌がありますが、私にも、人生をもう一度やり直してみたいと思ったことが何度かありました。
しかし、過去は変えられないので、今をどう生きようかと常に思慮している次第です。
初めの詩は、お世話になった目医者さんに「このままほっておくと、一年待たずに光さえも分からなくなるよ」と言われ、手術を決意した時の経験を詩にしたものです。
その時更に言われたことは「完全に失明してしまうか、光だけでも感じられるかは、天国と地獄程も違いがあるよ」。更に「石田さんの目の手術をできる医師は限られている」と言われて、栃木県にある自治医大の教授先生を紹介してもらったのでした。その後、目医者さんの紹介状を持って、自治医大を訪ねたのでした。
では読んでください。

〈決断〉

「7対3の割合だよ」と
手術を担当する
自治医大の教授は
粛々として
優しく言った
私は
「7割が成功の確率ですか」と
上目遣いに
恐る恐る聞いた
教授は
「7割が失敗の確立だよ」
「そのくらい難しい手術だと言うことだよ」と
胸に響くような
凛とした声で
厳かに言った
私は目がくらみ
茫然自粛となり
俯くことしか
できなかった
その刹那
涙が一粒流れ落ちた
次の瞬間
目から涙が溢れ出し
止めどなく
ズボンを濡らした
悲しいのか
怖いのか
悔しいのか
あるいは
情けないのか
己の思考では
理解できないまま
涙は溢れ続けた
ふと気付くと
看護師さんは
背中をさすってくれていた
私は徐ろに
ハンカチで涙をぬぐい
鼻水を
思い切りかむと
言った
「手術を受けないと
やがては失明するのですよね」と
教授はひとこと
「その通り」と
頷いた
考えるまでもなく
私は決めた
3割の成功率に
掛けることに…

▽ その手術は大成功だったのですが、その時だけ視力が上がり、国リハで目を酷使した為なのか、今では明暗の区別がつくだけになりました。
次の詩は、この頃、私の近くにいたおばさんの嘘に悩まされた経験から作った詩です。
昔の人が言った「人のふり見て我がふり直せ」という言葉を思いながら作りました。
では読んでください。

〈純〉

混じり物の多い
金よりも
純金が好き
汚れて濁った
川よりも
清流光る川で遊びたい
黄砂を含んだ
風よりも
花香る風が好き
汚れて霞んだ
瞳より
清く澄んだ瞳が好き
裏表のある
嘘つきよりも
醇乎で清らかな
心の人が好き
ああそれだからそれだから
私の心も
急いで急いで
隅から隅まで
大掃除大掃除

▽ 皆さんは、自分の心を時々は掃除していますか。私は、掃除してもしきれないほど、心に埃が溜まっているような気がします。
今回も、私の投稿を読んでくださりありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
石田眞人でした