第九十八号 過ぎたるは…
去年、ある物理学者が書いた『量子人間学』と言う本を読みました。その本に「行き過ぎた個人主義はいかがなものか」と書いてありました。私はそれを読んで『過ぎたるは及ばざるがごとし』という諺を思い出しました。
皆さんは、やりすぎて失敗したことはありませんか。私がお世話になった方に、体育大学を出て学校の先生をしていた方がいるのですが、その方に「健康の為に運動をするのなら、気持ちがいいと感じる程度にしなさい。達成感を得たいが為にやりすぎると、健康になるどころか、かえって体を壊すぞ」と言われたことがありました。
前置きはこのくらいにして、本題に入ります。初めの詩は、国リハで寮生活を始め、最初の内は、寮生活を楽しんでいたのですが、夏が過ぎ冬がやってくる頃には、やたらと故郷が懐かしく、妻の顔がちらつくようになりました。子供の頃には、ホームシックにかかると、母が恋しくなったのですが、この時には妻のことが思われてなりませんでした。
いい年をして、こんな気持ちになるなんて思いもよらないことでした。
この詩を、全国ベーチェット協会熊谷さんのホームページにのせてもらおうか、それとも
やめようかと悩みに悩みましたが、清水の舞台から飛び降りる想いで、投稿させてもらいました。『少し大げさに書いてしまったかな』とも思ったのですが、さらっと御笑覧ください。

〈あなたへpartⅡ〉

あなたと会えない時間が
想いを募らせるのです
・・・・
リハの昼下がりに
空の青さが
際立てば際立つほど
遠い北の空は懐かしく
リハの森が喃喃として
空気を揺さぶれば
衣川の瀬音を想いだし
岩井川のほとりには
溢れるばかりの桜が
澄んだ空に
彩りを加えていました
陸前高田の海辺では
カモメたちが 楽しそうに
愛を語らっていました
あの手打ちの十割蕎麦屋へは
車を走らせて
二人で何度も行きました
そんな何気ない思い出が
僕には嬉しくて
大切に仕舞っておきたいと想うのです
寒い朝
目を覚ませば
あなたは
今頃どうしているのかと思い
辛いことがあれば
エイコラ!
あなたの苦労に比べたら
なんのそのと
自分で自らを励まし
楽しい時間を過ごせば
ここにあなたがいたならと考え
美味しい物を頂けば
あなたにも食べてもらいたいと
願うのです
ただただ
あなたと出会えたことを
神様や仏様に
感謝感謝

※ この詩を書いたのは、私が53歳の頃でした。

▽ こんな恥ずかしい詩を、最後まで読んでくださった方へ感謝申し上げます。このことは、人生最大のホームシックの経験でした。
次の詩は、100%遊び心で作った詩です。この詩を最後まで読んでいただくと、私の妻の人となりがほんのちょっぴり出てきます。では、ちょちょいと読んでくださいませ。

〈月光〉

頭上に昇った
中秋の満月
まん丸い月から
放たれる
尽きることのない
光のパワー
俺は
両手を天高くつきあげ
月光の放つ力を
全身で受け止め
心まで届けと
念じて吸収する
すると俄に
変身が始まる
顔中が
毛むくじゃらになると
一声
腹の奥底から
力を込めて
悪党どもの安住の地
地獄へ向かって
牙をむき出し
吠える
その刹那
心に巣くう
漆黒の闇は割れて
悪党どもの
髑髏(されこうべ)は落ち
邪まな欲望は
崩れ去り
悪党どもは
身を震わせ
恐れおののく
そんな
想像を膨らませていると
妻の一声が
聞こえてくる
「変な本ばかり
よむのはやめなさい!」…と

▽ 妻は、私の大好きなサスペンスや推理小説が、大嫌いなのでした。
夫婦関係も、友達関係も相手を大切にする気持ちはとても大切ですが、自分の意思もきちんと伝えることも大切ですね。
しかし、自己主張が過ぎると、総ての関係を壊してしまうような気がします。
ここにも、過ぎたるは及ばざるがごとしが、ありますね。
今回も、最後までお付き合いくださりありがとうございました。
石田眞人でした