第八十三号 甘くて苦いもの…
子供のころ、小学校の先生から「聞くは一時(いっとき)の恥、聞かぬは一生の恥」という諺を教わりました。
一年くらい前に読んだ、浅田次郎の『一路(いちろ)』と言う本の中に「無知が愚かなのではなく、知ったかぶりが愚かなのである」と修行僧が言っていました。誰もが知ったかぶりをした経験をおもちなのではないでしょうか。
こんなことを書いている私は、恥ずかしながら、誰よりもそんな経験を多くもっています。
初めの詩は、国リハで勉強を始めてから迎えた、最初の誕生日に寂しさを覚えたことを書いたものです。この頃は、ホームシック病に感染していたようです。
どうぞ読んでください。
〈2012年2月10日〉
今日は俺の誕生日だ
信長は
『人生50年…夢のごとし』と
言ったとか言わなかったとか
その年を3年も過ぎた今
めでたいと言って
喜ぶことなどできるはずもない
しかし
寂しい
『誕生日おめでとう』と
言ってくれる人がいないのは
『今日は誕生日なのだ』と
どれだけ言おうとしたか…
胸から沸き上がり
咽元をくすぐる
そんな言葉も
ごくりと飲み込んで
宇宙を泳ぐ星たちに
祝ってもらった
夜空を彩り
暗闇に夢を飾る星たちが
『MASATOくんおめでとう』と言って
白く赤く光を放ち
俺を静かに
包んでくれる
頬をなでて
ゆったりと流れる風は
春の近いことを
知らせてくれる
テレビのニュースでは
キャンプインした巨人軍の様子を
声高に伝えている
ペナントレースも間近なことを感じて
心はウキウキ
胸はドキドキ
お腹はキューンキョーン
足はリーベルンリーベランと
全身が喜びを表し
小躍りしている
しかし寂しい
『誕生日おめでとう』と
祝ってもらえないことは…
憂鬱な時の流れが
心に虚しさを運び
何回も何回も
光陰が流れて行っても
寂しさが
胸を締め付ける
大人のはずなのに
まるで駄々っ子のように
混乱する心
そんな夜更けに
携帯電話が鳴った
プルプルンプルプルンと
誰だろうと
携帯をとると
いきなり
『お誕生日おめでとう』と
聞きなれた声がした
その一刹那
心はキュンとなり
ドクンと音がして
瞳は濡れた
次の瞬間
『ありがとう』と
満面な笑顔が
花開いた
それは俺の
世界で一番
幸せな時
▽ 実は、この電話は、妻からのものでした。この頃は、妻は岩手に住んでおり、私が一人所沢の国リハで、鍼灸マッサージ師の国家資格取得のために、勉強をさせてもらっていたのです。
スマップの歌ではありませんが♪夜空の向こうにはもう明日が待っている♪のですよね。そうだとすれば明日に希望を持ちたいですね。
次の詩は、私の大好きな食べものを、詩にしてみました。
とても甘い食べ物ですが、2月14日には苦い食べ物に感じられたことを覚えています。
どうぞ読んでください。
〈チョコレート〉
三船敏郎の
演技のように
ほろ苦く
大谷翔平の
マスクのように
甘さを含み
舌にのせれば
温泉につかって
ほぐれる心のように
ゆっくり溶けて
笑顔は花開き
口いっぱいに幸せを残して消えて行く
そうしてさり気なく
芳醇な香りは心に満ちる
大好きな大好きなチョコレート
▽ チョコレートと言えばバレンタイン…私のバレンタインは、甘いひと時と言うよりも、苦いひと時の方が多かったような気がします。
最近では、本当のことなのか、あるいは都市伝説にすぎないのかは判然としませんが、カカオが身体によいと聞いたので、カカオ86%のチョコを食べています。
今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
石田眞人でした